KOKORO NO MIRAI
決断できない自分が嫌いなあなたへ|過去の選択を思い出し、生き方を選び直す
生きづらさを、生きやすさに。
「自分を変えたいのに変われない」「決断できない自分が嫌い」。そう感じるたびに、また自分を責めていませんか? でも、今うまく決められないことと、あなたがこれまで一度も勇気を出してこなかったことは、まったく別の話です。
生きづらさを手放す心理カウンセラーの松野です。いつもありがとうございます。僕は、今の自分を否定して別人になることだけが「変わること」ではないと思っています。これまでの経験の中で身につけた振る舞いに気づき、今の自分が望む方向へ少しずつ選び直していくことも、大切な変化だからです。
今回は、あるコーチングの講話で語られた「自分は決断できないと思っていた女性」の話を手がかりに、過去の自分の見方を変えてみましょう。大きな成功を目指すためではなく、「変われない私はダメ」という思い込みを、少し緩めるための記事です。
自分を変えたいのに変われないのは、なぜ?
言いたいことがあるのに、相手の表情を見ると黙ってしまう。職場で頼まれごとを断れない。小さなことでも「私が決めていいのかな」と不安になり、最後は誰かに決めてもらう。こんな経験が重なると、「私は弱い」「私はずっと変われない」と考えやすくなります。
ただ、うまく動けない理由を意志の弱さだけで説明することはできません。失敗する怖さ、過去に否定された経験、今の職場や家庭の力関係、心身の疲れなどが重なっていることもあります。自分を変える方法ばかり探していると、なぜその選び方を続けてきたのかを見る機会を失ってしまうことがあるんですね。
「変われない自分が悪い」と決める前に、まず「その生き方は、今まで何を守ってきたのだろう?」と問いかけてみませんか。自分の反応に理由があるかもしれないと気づくことが、責める以外の選択肢を開きます。
あなたは本当に「決断できない人」なのでしょうか?
6人の子どもを育ててきた女性の話から考える
あるコーチングの講話で、自分の弱さを変えたいと話す女性のエピソードが紹介されていました。その女性は、自分はさまざまなことを決断できないまま人生が終わってしまうのではないか、と寂しさを感じていたそうです。
ところが話を聞いていくと、彼女は6人の子どもを育ててきた女性でした。そこでコーチは、その人生の中でどれだけの決断を重ねてきたのか、という別の視点を示します。ここでは講話の要旨だけを紹介しており、僕がカウンセリングした方の体験ではありません。
6人の子どもを育てるということは、きっと一度の大きな決断だけではありません。毎日の暮らしの中で、何を優先し、誰と相談し、何を引き受け、何を後回しにするか。そうした小さな選択も積み重なってきたはずです。もちろん、子育ての大変さや、その女性自身の事情まで外から決めつけることはできません。
ここで僕が伝えたいのは、「決断できない人」なのではなく、「決断してきた自分を数えていない」のかもしれない、ということです。 過去の自分を振り返るとき、失敗や後悔ばかり思い出していませんか。その陰にある、迷いながらも選んできた時間を、もう少し丁寧に見てあげてほしいんです。
「勇気がなかった」と思う日にも、選んできたものがある
転職をしなかったこと、誰かに本音を言わずに過ごしたこと、親との距離を変えられなかったこと。それを「何もしていない」と考える人もいます。でも、そのときには生活を守る事情や、心を落ち着かせるための理由があったのかもしれません。
もちろん、我慢し続けることを美化したいわけではありません。あのとき選べなかったことを責める前に、あのときの自分に見えていた選択肢を理解する。そのうえで「今なら、少し違う選び方ができるかな」と考えてみることができます。
人の中には、いくつもの自分がある──心のカードという比喩
僕たちの心を、何枚ものカードが入った一つの箱にたとえてみましょう。そこには、人に優しくできるカード、慎重に考えるカード、怖がっているカード、勇気を出すカード、誰かに助けを求めるカードがあります。どれか一枚だけが、本当のあなたではありません。
例えば、職場ではいつも相手に合わせるのに、家族のためならはっきり意見を言えた経験はありませんか。普段は慎重でも、大切な人が困ったときに思い切って行動したことがあるかもしれません。それなら「私は決断できない人間」という一枚のカードだけで、自分を説明する必要はないんです。
怖がっている自分を箱から捨てる必要もありません。怖さは危険を教えてくれることもあります。今はどの自分が前に出ていて、ほかにどんな自分がいるだろう? そんなふうに考えると、性格を丸ごと変えるより先に、今ある自分の可能性に気づけます。

人の顔色をうかがう自分は、あの頃の自分を守っていたのかもしれない
親が怒らないように言葉を選んでいた人。先生の期待に応えようと、いつも「いい子」でいようとした人。職場で衝突を避けるために、自分の意見を控えてきた人。そんな経験があると、周りの反応を先に確かめることが習慣になる場合があります。
ただし、誰もが幼少期の家庭環境によって今の生き方を決められたわけではありません。学校での経験、今の人間関係、体調、仕事の責任なども関係します。「すべて親のせいだった」と一つの答えにまとめなくていいんです。
僕が大切にしたいのは、「あの頃の自分には必要だった。でも、今の自分が同じように生き続ける必要はない」という見方です。人の顔色を見る力は、周囲と関わる中で身につけてきた工夫だったのかもしれません。その工夫を責めず、今の自分の生活に合うかどうかを確かめていけばいいんですね。
学校で「いい子」だった自分が大人になっても本音を出しづらい方は、学校で「いい子」だった人が本音を言えない理由も参考になります。こちらの記事では、過去の決断と現在の選び直しに焦点を当てていきます。
決断できない自分の奥に、怖さが隠れている場合
「私には人を支える役割の方が向いている」と思っていた人がいるとします。本当に支えることが好きで、その役割を自分で選んでいる場合もあるでしょう。一方で、前に出て失敗したり、誰かに否定されたりすることが怖くて、そうした役割に落ち着いている場合もあります。
同じ行動でも、そこにある気持ちは人によって違います。「向いている」と思ってきたことが、心から望んだものなのか、怖さから選んだものなのか。どちらか一方に決めつけるのではなく、今の自分に聞いてみたいですね。
恐怖は悪い感情ではありません。危険な相手から距離を取るときには必要な働きでもあります。けれど、すべての選択を「嫌われないか」「失敗しないか」だけで決め続けると、本当はどうしたいのかが見えにくくなることがあります。
だから、怖さを消してから動こうとしなくて大丈夫です。「怖いと感じているんだね」と今の自分に気づいたうえで、「それでも私は何を大切にしたい?」と、小さく問い直せるかもしれません。
自分の気持ちが分からなくなっている方へ。
頭では分かっても、長年続けてきた生き方を一人で整理するのは難しいことがあります。「変わりたいのに決められない」「人の目が怖い」。そんな気持ちを、うまく説明できないままでも構いません。
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相手にどう思われるかより、今の自分はどうありたいか
決断するとき、つい「相手に嫌われないためにはどうすればいい?」と考えてしまうことがあります。そんなとき、問いを少し変えてみませんか。「私はどんな関係を築きたい?」「どんな姿勢でこの人と接したい?」と。
例えば、相手に好かれるために何でも引き受けるのではなく、約束を守りながら自分の限界も伝える。期待に応えるために本音を隠すのではなく、相手の考えも聞いたうえで自分の考えを一言添えてみる。強く言い返すことだけが、自分軸ではないんですね。
他人の反応は、自分では決められません。でも、自分がどんな言葉を選び、どんな振る舞いを大切にしたいかには、少しずつ関わっていけます。自分を大切にすることは、相手を大切にしないことではありません。
「こうしなければ」という考えが強い方は、「〜すべき」思考がやめられないときの記事もあわせて読んでみてください。このページは、べき論を直す方法ではなく、過去の自分を一枚の評価だけで決めつけないための話です。
安心・変化・重要感・つながり・成長・貢献──六つの欲求という考え方
コーチングには、人が行動するときの願いを「安心」「変化」「重要感」「つながり」「成長」「貢献」という六つに整理する考え方があります。これはトニー・ロビンズの「Six Human Needs」と呼ばれる枠組みです。提唱者による説明がありますが、科学的にすべての人を六種類に分類できる診断法と考えるものではありません。
| 欲求 | 日常の気持ちの例 |
|---|---|
| 安心 | 先のことが分かって落ち着きたい |
| 変化 | いつもと違う経験をしてみたい |
| 重要感 | 自分にも大切な役割があると感じたい |
| つながり | 誰かと安心して関わりたい |
| 成長 | 昨日とは違うことを学びたい |
| 貢献 | 自分の力を誰かの役に立てたい |
例えば「認めてほしい」と感じている人が、重要感やつながりを求めて、必要以上に周りに合わせることもあるかもしれません。その願い自体を悪者にする必要はありません。ただ、認めてもらうために自分をすり減らしているなら、別の満たし方を考えられます。
「誰かに必要とされないと自分には価値がない」から、「大切な人を支えたい。でも、僕自身の時間も守りたい」へ。欲求を消すのではなく、今の自分を苦しめない形で大切にする。僕はこの見方に、自己受容とつながるヒントがあると思います。
ここで少しだけ自分の気持ちに目を向けてみませんか?
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自分を変えようとする前に、今日の所作と振る舞いを整える
「人生を変えよう」と大きな目標を立てたのに続かなかった。そんな経験があると、また挑戦することが怖くなります。だからといって、大きな目標を持つこと自体が悪いわけではありません。まず、目の前の一つの場面で、自分がどんな姿勢でいたいかを考えてみましょう。
例えば、相手が話しているとき、自分の返答ばかり心配せずに一度最後まで聞いてみる。緊張していても、背筋を少し伸ばして返事をする。謝る必要があるときは丁寧に謝り、必要のない場面では「ありがとうございます」と伝えてみる。所作や言葉遣いを整えることは、完璧な自分を演じることとは違います。
「今ココ」に戻るとは、過去の傷を消すことでも、未来の不安を無理に打ち消すことでもありません。目の前で起きていること、自分の感情、これから選べる小さな行動を確かめることです。過去の自分に感謝しながら、今日の振る舞いを選び直せるんですね。
今日できる五つの小さな選択
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相手の顔を見る前に、一度自分の気持ちを確かめる。「本当はどうしたい?」という問いを心の中で一度だけ持ってみます。
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すぐに「すみません」と言う前に、必要な謝罪か考える。失敗したなら誠実に謝る。単に意見が違うだけなら、自分を下げなくても構いません。
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返事を急ぐ必要がなければ、少し時間をもらう。「考えてからお返事してもいいですか?」も立派な自分の選択です。
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怖さを感じたら、何を守ろうとしているのか考える。相手との関係、生活の安定、安全など、怖さの背景にある大切なものを見つめます。
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今日は一つ、自分で決めたことに気づいてみる。休憩を取った、連絡を明日にした、好きなお茶を選んだ。大きさより、選んだ事実を見てあげます。
すべてできなくても構いません。「今日もできなかった」と数えるのではなく、「今日は自分の気持ちに気づいた」という小さな変化を見落とさないでほしいんです。
自己受容は、自分を甘やかして何もしないことではありません。自己への思いやりを研究するKristin Neffの2023年のレビューでも、苦しんでいる自分に優しく接することと、改善に向かう動機づけが両立し得ることが論じられています。研究レビュー。これはすべての人に同じ効果を保証するという意味ではありませんが、「責めないと成長できない」と決めなくてもよい理由の一つになります。

ひとりで整理しにくいときは、声や言葉を借りてもいい
「過去の選択を思い出そうと言われても、何も浮かばない」。そんなときもあると思います。無理に良かった出来事を探したり、前向きな答えを出したりする必要はありません。自分の気持ちが分からない状態から、誰かと少しずつ整理してもいいんです。
松野の考え方をまず文章で知りたい方は、公式LINEの案内をご覧ください。登録だけで有料カウンセリングが始まることはなく、メッセージ相談の利用条件や継続相談については公式ページで確認できます。気持ちがうまくまとまらなくても、そこから話し始められます。
文章を読むより声を聴きたい日には、松野正寿のVoicyチャンネルもあります。「こうあるべき自分」と本音のズレ、自己否定などのテーマを声でお届けしています。まず配信を聴いてみて、また聴きたいと思ったらフォローしていただけたらうれしいです。
詳しい「生き方を変える方法」そのものを知りたい方には、別の記事これをしたら人生が変わったと「生き方」を変えたい方へもあります。このページでは、方法を増やすよりも、これまで選んできた自分を思い出すことを優先しました。
よくある質問
決断できない自分は、やっぱり弱いのでしょうか?
決断に時間がかかることだけで、人の強さや弱さを決めることはできません。今迷っていることと、これまで選んできた経験は別です。すぐに決められない事情や安全上の理由がある場合もあります。
子どもの頃の自分を思い出せなければ、変われませんか?
いいえ。過去を無理に掘り返す必要はありません。思い出すことでつらさが強くなるなら、今の自分が感じていることや、安全に選べる小さな行動だけから始めても構いません。
自己受容したら、努力しなくなるのでは?
ありのままの自分を受け止めることと、今後の行動を選ぶことは両立できます。怖いと感じていることを認めながら、できそうな一歩を考えることもできます。詳しくは自己効力感と自己受容の違いも参考にしてください。
人の顔色を気にするのをやめられません。
長く続けてきた振る舞いは、気合いだけで急に変わらないことがあります。今も威圧的な環境にいる場合は、考え方だけでなく安全な距離や支援先を考えることも大切です。強い不安や不調が生活に支障を与えているときは、医療機関や公的な相談先も利用してください。
まとめ|本当の自分を取り戻すことは、今の自分を否定することではない
決断できない自分が嫌いだったとしても、その一つの場面だけで、人生のすべてを決めつけないでほしいんです。迷いながらも、今日まで歩いてきた。誰かを大切にしようとした。時には自分を守るために立ち止まった。そんな選択もあなたの人生の一部です。
人の顔色をうかがっていた自分にも、慎重に考えてきた自分にも、理由があったのかもしれません。だから、過去の自分に感謝しながら「今の自分はどうありたい?」と問い直してみましょう。それが僕の考える、傷を気づきへと変え、生きづらさを少しずつ生きやすさへ近づけていく姿勢です。
自分を変えるために、今の自分を嫌いになる必要はありません。これまでの自分を受け入れることから、新しい生き方が始まるのだと僕は思います。
参考にした情報
- Tony Robbins「Why do you do what you do?」:六つの欲求というコーチング上の考え方。
- Kristin D. Neff(2023)Self-Compassion: Theory, Method, Research, and Intervention, Annual Review of Psychology:自分への思いやりと変化の動機づけに関する研究レビュー。







