4冊目の命の時間について著者として伝えたいこと

僕の中で本当の意味で介護に対するスイッチが入ったのは
父の何気ない一言でした。

みんな母ちゃんの為に仕事とはいえ
よーしてくれるよなと・・・

確かに短い時間の中で僕が少しでも楽になれる様に、
1時間という短い中でも懸命に両親と向き合ってくださっている。

ただ、介護を受ける当の本人たちが治療をしていこうではなく、
生きれるまで生きたいという選択をした訳だから

当然ながら死に向かうまでQOLを落とさない
終身治療ではなく終身ケアになるという事だよな?

僕は親がこの世を去るまでの間、こんな気持ちで
淡々と仕事をこなす様な感じの介護で子供としていいのか?

いや、良いはずがないやろ?家族だからこそ
俺が助けないと、俺ががんを治すつもりで取り組まないと、
寿命だからと割り切れる訳がないやろ?

これまで育ててもらった恩をお前はどれだけ返したのか?
1番後悔をするのは本気で親と向き合っていない俺じゃないのか?

僕の中で何かフツフツとした情熱が、
父の一言で湧き上がってきたのです。

両親二人が末期がんになってどう生きたいのか?を決めたのならば、
その気持ちを尊重した上で、

子供の僕自身はどう生きたいのか?を決めるべきだよなと・・・

僕が息子として決めた事は、本格的な治療を選択せずに
自宅の中で生きれるだけ生きるを決めた親を介護をしながら
少しでもがんが広がっていかない様に治すつもりで
自分の人生を使おうという事でした。

この瞬間、介護が続くという事は命が続くという事になりますから
生涯独身で良いと決めてこれが僕に与えられた使命なのだと
覚悟を決めました。自分の中で後悔を残さない為に・・・

僕は治療を受けないと決めた両親を
助けるつもりで介護をしていきます。

ただ母が就寝する時に僕に伝えた
「あたしにはあんたしかおらんけん・・」と違和感を
感じ部分はあとから徐々に

僕は気づく事になっていくのですが、
僕と母の想いの意図が違っていて
介護を通じてかなりぶつかっていく事になります。

僕は治すつもりで母と向き合っていくのですが、
母が僕に望んでいたのはそこではなく

そして、実は精神的にも弱いと思っていた
母が一番強かったという事を思い知らされていきます。

学校でも、仕事でも学ぶ事が出来なかった事を
介護を通じて学ばせてもらう事になります。

本当に女性の立場になってみないと分からないものですよね・・・

母は強し、そして女性は偉大だという事を
男性の僕が女性の立場になって未経験からはじまった
介護のお陰で僕は数多くの経験と学びをもらいました。

つまり、家族の中で一番学ばないといけなかったのは
僕だったという事です。

母は僕に助けて欲しかったのではなく、
既に昔から覚悟が決まっていて

残りの命をかけて介護を通じて
色んな事を経験させようとしていたのです。

女性が家の中でどれだけ家族の事を想いながら
1日を過ごしているのかということ、

父が自分と同じ様になった時に
僕が困らない様にすること、

将来、僕が結婚して奥さんや子供たちの為に
自分の経験を活かすこと、

そして最後に母がこれまで僕に教えてきた事の
大切さを僕の未来の為に思い出させること

少子高齢化の時代が加速しているからこそ、
僕が大黒柱として単純にお金を稼ぐだけではなく、

自分の身の回りの事や家族の未来を背負って
生きていける人間になる為に、

母はわざと病院ではなく自宅介護にこだわったのです。
それを口にする事はありませんでしたが

自分の命と僕を向き合わせて気づかせようとしている事は
月日の流れと共に分かってきました。

仕事をしながら、当たり前の生活を維持しつつ、
両親二人を男一人で介護していくのは

自分が思っている以上に過酷ではありましたが
今は感謝しかありません。

この本は何も家事が出来ない30代独身男性の一人っ子が、
両親二人の末期がん介護を通じて

女性の偉大さ、女性の気遣いや思いやり、
親としての責任の果たし方、そして感謝と恩返しを
学び直しながら成長をしていく1つの物語です。

現実問題として介護は遅かれ早かれ
誰にでも訪れるものです。

もちろんお金をはじめ、自分の体力や精神も削られますし、
時間との戦いで本当に大変なのですが、

僕は得た事の方が圧倒的に大きかったです。
感謝しかありません。

今はコロナ禍が加速しているからこそ
無知では絶対にいけません。

いつかは必ず誰にでも訪れるがん介護