「自己肯定感が低い」と感じる人ほど、どこかでずっと自分に言い聞かせてきたはずです。

「もっと前向きにならなきゃ」
「自信を持てるように変わらなきゃ」
「このままじゃダメだ」

でも僕のカウンセリングでは、ここをいったん止めます。
自己肯定感は、無理に高めなくていいと僕は考えています。

なぜなら、「上げなきゃ」と頑張るほど苦しくなるのは、今の自分を否定している状態だからです。
心の中で起きているのは、こんな構図です。

「自己肯定感が低い自分」=ダメ → 早く直せ → もっと頑張れ

この圧が強いほど、心は緊張し、日常の小さな失敗や他人の反応が刺さりやすくなります。
だから僕は、自己肯定感の“数値”を上げる前に、もっと手前の技術――欠点も含めた「ありのまま」の自分を許すことを扱います。

具体的には、自己肯定感を「上げる」ではなく、自己否定の習慣を「減らす」
これだけで人生は驚くほど静かに、そして楽に変わり始めます。

今日この記事で一緒にやるのは、派手なポジティブ思考ではありません。
自分を責めるクセから自由になるための、現実的な手順です。

自己肯定感が低い人ほど「高めようとして」苦しくなる理由

「『いい子』をやめるのではなく、“自由に選べる”ようになる」という見出し。合わせる・合わせないを自分で選べる状態を道が分かれるイラストで表現し、境界線を引く練習などを紹介した図
「人への合わせすぎ」から脱却し人生の主導権を取り戻すための回復のカタチ

自己肯定感が低い状態って、単に「自信がない」だけじゃないことが多いんです。

僕が見てきた感覚で言うと、裏側にはだいたい次のどれか(または複数)が隠れています。

  • 評価でしか安心できない(褒められないと不安になる)
  • 失敗=価値が下がるという前提がある
  • 人に迷惑をかけたら終わりと思っている
  • ちゃんとしないと愛されない感覚が残っている

この状態で「自己肯定感を上げよう」とすると、よくある落とし穴が起きます。

肯定でき

「生きづらさの背景にある、もうひとつの視点」という見出し。自己否定が安全装置になっている・本音より関係維持が優先・孤独感は「自分がいない」感覚から来るという3つの視点を図解したイラスト
生きづらさの背景にある生存戦略としての心理メカニズムの解説

ない自分を、さらに否定してしまうんです。

たとえば、SNSで「自分を好きになろう」と見かける。
すると一瞬は「よし」と思えるのに、数分後にはこうなる。

「好きになれない…やっぱり自分は問題がある」
「肯定できない私はダメだ」

<

「限界まで頑張るあなたへ」という見出し。他人の期待を背負って崖っぷちを歩く姿から自分の気持ちを大切にして立ち止まる姿への変化を描いたイラスト
限界まで我慢する生き方から自分を起点に選べる人生への回復ステップ

p>これ、本人の努力不足じゃありません。
やり方が「自分に圧をかける方向」になっているだけです。

僕が提案するのは「自己肯定感」より先に、自己受容(ゆるす技術)

僕はこう考えています。
自己肯定感は“結果”であって、目標にすると苦しい

一方で自己受容は、今この瞬間から練習できます。

自己受容って、「自分が最高!」と思い込むことじゃありません。
もっと地味で、でも確実に効きます。

  • 好きになれなくてもいい
  • 自信がなくてもいい
  • 傷つきやすくてもいい
  • 怖がっている自分がいてもいい

この「いてもいい」を増やしていく。
すると、心の緊張が少しずつほどけて、結果として行動が自然に出てくる。
その後から、自己肯定感が“ついてくる”ことが多いんです。

「ACの回復:頭の理解を超えて、心と身体の“古い緊張”を緩める」という見出し。緊張した状態から「解放と緩和」へ向かう様子と「あなたがあなたの味方になっていくこと」の重要性を説いたイラスト
インナーチャイルドとの関わり方を通じた心身の緊張緩和と自己受容のプロセス

僕のカウンセリングでは、まず何を大事にするか

僕のカウンセリングでは、最初に「変わる」より「戻る」を大事にします。

ここで言う「戻る」は、昔に戻るとか、諦めるという意味ではありません。
自分の感覚に戻るということです。

自己肯定感が低い人は、たいてい長いあいだ「外の基準」で生きてきました。

  • ちゃんとできたか
  • 迷惑をかけてないか
  • 嫌われてないか
  • 評価されているか

もちろん社会で生きる以上、外の基準は必要です。
でもそれだけになると、自分の内側は置き去りになります。

だから僕はまず、次の順番で整えていきます。

  1. 今の状態を否定しない(しんどいなら、しんどいでいい)
  2. 責める声を弱める(厳しい内なる声を観察する)
  3. 体の緊張をほどく(安心が戻ると、考え方も変わる)「今日からできる具体策:苦しさを軽くする小さな練習」という見出し。結論を保留する・感情に名前をつける・小さな本音を出すという3つの実践ステップを図解したイラスト
    日常生活の中でACの生きづらさを和らげるための具体的なセルフケア方法

    i>

  4. 小さく選び直す(完璧な決断ではなく、今日の一歩)

この順番を飛ばして「前向きになろう」とすると、心はついてきません。
逆に、順番を守ると、変化は静かでも確実です。

実際に多いお悩みと、僕が見てきた解決の糸口<
「負の連鎖を『見える化』」という見出し。頼まれて断れずしんどくなるパターンと相手の不機嫌を自分のせいと感じて機嫌を取るパターンの2つを仕組みとして図解したイラスト
無意識に繰り返してしまう「負の連鎖」を客観的に理解するための解説

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自己肯定感が低い方からよく聞くのは、こんな悩みです。

  • 褒められても素直に受け取れない
  • ミスすると頭の中で反省会が終わらない
  • 人と比べて落ち込むのが止まらない
  • 「頑張ってるのに満たされない」感覚がある
  • 休むと罪悪感が出てくる

ここで、短いストーリーを一つ書きます(個人が特定されないよう一般化しています)。

以前、仕事ができるのに常に自分を責めてしまう方がいました。周りからは信頼されているのに、本人の頭の中では毎日こうでした。
「この程度で褒められても…」
「もっとできたはず」
「次は失敗するかもしれない」

話を聴いていくと、子どもの頃から「頑張って当たり前」「できて当然」という空気の中で育ち、安心する経験が少なかったそうです。
だから達成しても、心が休まらない。休まる前に、次の課題へ追い立てられてしまう。

僕が一緒にやったのは、自己肯定感を上げるトレーニングではなく、責め始めた瞬間に気づき、止める練習でした。

具体的には、ミスの後に「人格の否定」まで飛んでいくクセを、毎回“作業の修正”に戻す。
「自分はダメ」ではなく「手順を一つ直す」。
これを繰り返すうちに、本人の中で変化が起きました。

「責めなくても、改善はできるんですね」

僕はこの一言を聞いたとき、すごく大事なポイントに触れたと思いました。
人は、自分を責めなくても成長できるんです。

「ありのまま」を誤解しないために:許す=甘やかす、ではない

自己受容の話をすると、よくこう言われます。

「ありのままって、結局甘えになりませんか?」

僕はこう考えています。
甘やかしは“現実から逃げること”で、自己受容は“現実に戻ること”です。

たとえば仕事でミスをしたとき。

  • 甘やかし:「まあいいや。気にしない」(本当は怖いのに見ない)
  • 自己受容:「怖かったね。焦ってたね。じゃあ次の一手は何にする?」

自己受容は、感情を認めた上で、現実的な修正に戻ります。
だからむしろ、長い目で見て一番“ちゃんとしている”方法だったりします。

自己肯定感が低いときに効く「自分を許す」具体策(セルフワーク付き)

ワー

「生きづらさの正体は…?」という見出し。重荷を背負った人のシルエットと、それを「生き延びるための知恵」として寄り添う子供の姿。下部にはカウンセラー松野正寿氏の紹介
生きづらさの構造理解とカウンセリングを通じた解決へのアプローチ

ク1:責める声に名前をつける(内なる検査官の正体を見える化)

自己肯定感が低い人の頭の中には、かなり高確率で「厳しい声」がいます。
僕はこれを、あなたの“敵”だとは思っていません。むしろ、あなたを守るために働きすぎている「

「ACという言葉が当てはまるかどうかよりも今の生活の中でこんな感覚が続いていないかを大切にしてみて」という見出し。対人関係や自己否定に関する5つのチェック項目を記したイラスト
アダルトチルドレン(AC)に見られる自動的な対人パターンのチェックリスト

検査官」みたいなものです。

手順はシンプルです。

  1. 自分を責めた言葉を、そのままメモする(例:「何やってるんだ」「だからダメなんだ」)
  2. その声に名前をつける(例:「完璧主義さん」「不安警報」)
  3. 言い方を“少しだけ”弱めた言葉に言い換える(例:「次は確認を一個増やそう」)

ポイントは、いきなり優しい言葉にしないことです。
急に「大丈夫だよ」って言われても、心が信じないことがある。だから、現実的で、攻撃性の低い言葉に変えるのがコツです。

ワーク2:「欠点→人間らしさ→対策」の3段階に並べ替える

自己肯定感が低いと、欠点が出た瞬間に「人格の否定」に直行します。
だから、思考の順番を並べ替えます。

紙にこう書いてください。

  • 欠点(事実):例)また先延ばしした
  • 人間らしさ(背景):例)疲れてた/怖かった/完璧にやりたかった
  • 対策(次の一手):例)5分だけ着手/締切を人に宣言/最初の一行だけ書く

この3段階を通すと、「自分はダメ」が入り込む余地が減ります。
欠点は消さなくていい。扱い方を変えればいいんです。

ワーク3:「今日の自分を許す一文」を作る(短いほど強い)

夜におすすめです。1日を振り返って、最後に一文だけ書きます。

例:

  • 「怖かったけど、やめなかった」
  • 「今日はうまくできなかった。だから休む」
  • 「人と比べた。比べた自分も責めない」
  • 「自信はない。でも、やる」

大事なのは、“自己評価”ではなく“自己許可”になっていることです。
点数をつけると、また苦しくなります。

ワーク4:比較が止まらないときの「視点の避難」

自己肯定感が低いと、比較で心が削れやすいです。
比較は悪ではないけど、疲れているときの比較は毒になります。

そんなとき僕は、いったん視点を避難させます。

  1. 今見ているものを止める(SNSを閉じる、席を立つ)
  2. 体の感覚に戻る(足裏、呼吸、肩の力)
  3. 「今の比較は、僕を良くする?」と自問する

答えが「No」なら、その比較は“情報”ではなく“自傷”になっています。
まず避難していい。これも自己受容の一部です。

「自分を責める習慣」を減らすと、現実はどう変わるか

自己肯定感が低い人は、能力が低いわけじゃありません。むしろ真面目で、気がつきやすく、責任感が強いことが多いです。

ただ、その良さが「自責」という形で暴走してしまう。

自分を責める習慣が減ると、変化はこう出ます。

  • ミスのあとに立て直しが早くなる
  • 人の評価に振り回されにくくなる
  • 休む罪悪感が薄れ、回復が早くなる
  • 「やらなきゃ」より「やろう」が増える

派手な自己肯定感ではなく、静かな安定。
僕はそれが、いちばん強い土台だと思っています。

途中で折れそうなときに思い出してほしいこと

自己受容の練習をしていると、こういう日が来ます。

「わかった気がするのに、また責めてしまった」
「結局変われないのかな」

そのとき僕はこう考えています。
戻るのが早くなっているなら、それは前進です。

責めてしまう日があるのは、人間だから当たり前です。
大事なのは、責めたことをさらに責めないこと。
ここで二重に叩くと、また元のループに戻ります。

関連記事

「自分を責める」「ネガティブが止まらない」「生きづらさが抜けない」あたりは、自己肯定感の低さと地続きです。必要なところから読んでみてください。

ちなみに、仕事での自責が強い人は、上の自責のループを断つ記事がかなり直結します。
また、頭の中がネガティブで埋まるタイプの方は、脳の防衛反応を切り替える習慣から入ると取り組みやすいです。

自己肯定感の呪縛から自由になるために、今日できる最小の一歩

最後に、今日いちばん小さくていい一歩を書きます。

「自己肯定感を上げなきゃ」を、今日は一回だけやめてみる

そして代わりに、こう言ってみてください。

「今の僕を否定しない。ここから整える」

自己肯定感が低いことは、あなたの欠陥ではありません。
それはたぶん、これまで生きるために身につけてきた“守り方”です。

守り方は、変えられます。
無理に自分を好きにならなくていい。
ただ、責める手をゆるめるだけで、人生は静かに変わり始めます。

よくある質問(FAQ)

最後に、カウンセリングの現場でもよく出る質問をまとめます。

よくある質問

自己肯定感が低いのは性格だから仕方ないですか?

僕は「性格」というより、これまでの環境や経験の中で身についた“自分の守り方”だと捉えています。守り方は習慣なので、責め方のクセを弱めたり、安心を増やしたりすることで少しずつ変えていけます。

自己肯定感を高める方法がたくさんあるのに、なぜ僕はうまくいかないのでしょうか?

うまくいかない理由は、努力不足ではなく順番の問題が多いです。「肯定できない自分」を肯定しようとして、逆に自己否定が強まることがあります。僕はまず自己受容(今の自分を否定しない)から入るのが安全で確実だと考えています。

ありのままを受け入れると成長できなくなりませんか?

自己受容は甘やかしではありません。感情や状態を認めた上で、現実的な修正に戻る力です。自分を責めなくても改善はできるので、むしろ長期的には成長が続きやすくなります。

褒められても素直に受け取れません。どうしたらいいですか?

「受け取れない自分」をまず責めないことが大前提です。その上で、いきなり喜べなくてもいいので「ありがとうございます」だけ言ってみる、メモに事実として残すなど、受け取り方を“小さく”作るのがおすすめです。感情が追いつくのは後からで大丈夫です。

人と比べて落ち込むのが止まりません。

比較は自然に起きますが、疲れているときの比較は自傷になりやすいです。僕はまず「視点の避難」(SNSを閉じる・体の感覚に戻る・その比較が自分を良くするか確認)を提案します。落ち込みを止めるより、ダメージを小さくするのが先です。

自己受容の練習をしても、また自分を責めてしまいます。失敗ですか?

失敗ではありません。責めてしまう日があるのは自然です。大事なのは「責めたことを、さらに責めない」こと。戻るのが早くなっているなら前進です。自分を責めるクセは長年の習慣なので、ほどけるにも時間がかかって当然だと僕は考えています。