職場の人間関係がうまくいかない時、いちばん苦しいのは「仕事」そのものよりも、誰かの顔色を伺い続けてしまう自分に気づいた瞬間かもしれません。断れない、嫌われたくない、空気を壊したくない…。気づけば「いい人」を演じることが習慣になって、家に帰っても心が休まらない。
僕はこう考えています。職場でうまくいかない原因が「あなたの性格が弱いから」ではなく、“いい人でいなければ安全ではない”という心の反応になっているケースがとても多いです。だから必要なのは、相手を変える努力より先に、自分軸(自分の境界線)を取り戻すことなんですね。
なぜなら、いい人を続けるほど「都合のいい人」になりやすく、無理が積み上がっていくからです。心理学的には、過剰適応(周りに合わせすぎる適応)や、アダルトチルドレン傾向(場の空気や他者の機嫌を優先しすぎる)として現れやすい。優しさの裏返しでもあります。
この記事では、職場の人間関係がうまくいかない時に「いい人」を卒業し、自分らしく楽に働くための心理学を、具体策とセルフワークで整理します。読み終えた頃に「呼吸が少し深くなる」感覚が残れば、僕は嬉しいです。
職場の人間関係がうまくいかない時、「いい人」がしんどくなる仕組み

「いい人」をやめたいのにやめられない。ここには、はっきりした心の仕組みがあります。
僕のカウンセリングではよく、次の3つがセットで起きています。
- ① 期待に敏感:「こうしてほしいよね?」を先回りして察してしまう
- ② 境界線が薄い:頼まれると断れず、自分の時間や体力が削れる
- ③ 自己評価が他人基準:褒められると安心、否定されると一気に崩れる

ここで大事なのは、これは怠けでも甘えでもなく、**生き延びるために身につけた「反応」**だという点です。過去に、波風を立てると不利益があった。怒られる、無視される、居場所がなくなる。そんな経験があると、脳は「いい人でいれば安全」と学習します。

でも職場は、家庭や学校と違って、利害や役割が絡みます。だから「いい人」のままだと、お願いが増えたり、責任だけ増えたり、雑に扱われたりして、関係が余計にこじれることがあるんですね。
「自分軸」を取り戻す=わがままになることじゃない
自分軸というと、「強く言い返す」「ズバズバ断る」みたいに誤解されがちです。でも僕はこう考えています。自分軸は攻撃性ではなく、自分の内側の基準を知り、守る力です。
職場での自分軸は、たとえば次のような形で現れます。
- 無理な依頼に対して「できない」と言える
- 自分のミスは修正するが、他人の責任まで背負わない
- 相手が不機嫌でも、必要以上に自分を責めない
- 雑談や飲み会の距離感を、自分で選べる

これは「冷たい人」になることではありません。むしろ、境界線がある人の方が、長期的には丁寧に人と関われます。疲弊しないからです。
僕のカウンセリングでは、まず何を大事にするか
僕のカウンセリングでは、いきなり「断りましょう」「言い返しましょう」とは進めません。まず大事にするのは、あなたの中にある“反応のパターン”を責めずに理解することです。
具体的には次を丁寧に見ます。
- どんな相手に対して「いい人スイッチ」が入るのか(上司?年上?強い口調の人?)
- どんな場面で苦しくなるのか(頼まれた瞬間?雑談?会議?ミス報告?)
- その時、頭の中で流れる自動思考(「断ったら嫌われる」「私がやらないと迷惑」など)
- 体に出る反応(胸が詰まる、息が浅い、手が冷える、胃が痛い等)
そして僕は、ここに「インナーチャイルド」の視点を重ねます。職場の出来事そのものより、心の奥の“小さな自分”が何を怖がっているかが見えてくることが多いからです。

すると、戦い方が変わります。相手をねじ伏せる必要がなくなり、「自分を落ち着かせて、必要なことだけ伝える」方向に整っていきます。
実際に多いお悩みと、僕が見てきた解決の糸口
「職場の人間関係がうまくいかない」という相談で多いのは、次のタイプです。
- 仕事を振られやすく、断れず、いつもキャパオーバー
- 人の機嫌に振り回され、雑談や空気読みで消耗する
- ミスを必要以上に引きずり、「自分が悪い」で終わらせてしまう
- 相談できる人がいなくて、孤立感が強い
松野の体験+短い解決ストーリー(匿名)
僕自身も会社員を長くやってきたので、職場の空気の重さや、理不尽な依頼の断りにくさは体感として分かります。特に「ちゃんとしなきゃ」「迷惑をかけたくない」が強い時ほど、背負いすぎるんですよね。
以前、ある方(仮にAさん)が「職場の人間関係がうまくいかない。優しくしているのに雑に扱われる」と来られました。Aさんはとても誠実で、頼まれごとを断れず、残業が増え、家に帰っても“反省会”が止まらない状態でした。
僕が一緒に整理したのは、「断れない」より前に起きている反応でした。Aさんの中では、頼まれた瞬間に**「断ったら見捨てられる」**という感覚が走っていたんです。
そこで、いきなり断る練習ではなく、まず**“ワンクッション”**を作る練習をしました。言い方を変えるだけでなく、体の反応を落ち着かせてから返事をする。結果、少しずつ「抱え込み」が減り、周りの対応も変わっていきました。面白いことに、境界線ができた途端、むしろ関係が悪化するどころか「頼み方が丁寧になった」という変化も起きたんですね。
解決の糸口は、強くなることではなく、自分の反応に気づき、選べる状態に戻すことでした。
今日からできる具体策:いい人を卒業する「心の技術」5つ
1)まずは「即答」をやめる(境界線の第一歩)
断れない人ほど、依頼された瞬間に「はい」と言ってしまいます。だから最初のゴールは断ることではなく、即答しないことです。
使えるフレーズ例:
- 「一度スケジュール確認して、◯時までに返します」
- 「今の優先順位を見て、今日中にお返事します」
- 「確認してからで大丈夫ですか?」
これだけで、相手のペースから自分のペースに戻れます。自分軸は、まず“間”から生まれます。
2)NOを「代案」に変換する(角を立てない自己主張)
職場は勝ち負けより、回ることが大事な場所です。だから、完全な拒否よりも「代案」にすると現実的です。
- 「今日は難しいので、明日の午前ならできます」
- 「ここまでなら対応できます。残りは誰かにお願いできますか?」
- 「急ぎなら優先順位を上司に確認してからでもいいですか?」
ポイントは、自分の限界を説明する=自分の存在を丁寧に扱うということです。
3)「相手の機嫌」と「自分の価値」を切り離す
相手が不機嫌だと、「僕が悪いのかな」と感じる方は多いです。でも不機嫌は、その人の課題であることも多い。ここでのセルフワークを一つ紹介します。
紙に2列で書きます。
- 左:事実(例「強い口調で注意された」)
- 右:解釈(例「嫌われた」「私は役に立たない」)
そして最後に、この質問を入れます。
「別の解釈は3つあるとしたら?」
- 忙しくて余裕がないだけかもしれない
- 言い方が下手な人なだけかもしれない
- 注意内容は仕事上必要で、人格否定ではないのかもしれない
自分を守るのは、ポジティブ思考ではなく、解釈の選択肢を増やす力です。
4)「頼まれやすい人」の特徴を逆手に取る(役割の再設計)
いい人は、周りから見ると「頼めばやってくれる人」です。だから頼まれやすさを消すより、頼まれ方を整える方が現実的です。
例えばこんなルールを自分の中に作ります。
- 急ぎ案件は「締切」「目的」「優先度」が揃ってから着手する
- 口頭依頼は「チャットで依頼内容ください」に統一する
- 自分のタスクが一定数を超えたら、上司に優先順位を確認する
これは冷たいのではなく、仕事を回すためのプロの設計です。境界線は“感情”ではなく“運用”にすると安定します。
5)呼吸で「今ココ」に戻す(反応を鎮める)
職場で人間関係がうまくいかない時、頭の中がずっと緊急事態になります。そんな時に役立つのが呼吸です。
簡単な方法:
- 鼻から4秒吸う
- 2秒止める
- 口から6秒吐く
- これを3セット
吐く方を長めにすると、体が「安全」を思い出しやすいです。安全が戻ると、言葉選びも戻ってきます。
「職場の人間関係がうまくいかない」を長引かせる3つの落とし穴
- 落とし穴1:すべて自責で終わらせる
反省は成長につながりますが、自責は心を削ります。自責が強い方は、こちらの記事も参考になります:【仕事の悩み】自分を責めるのをやめる。自責のループを断つ心の整え方
- 落とし穴2:相手を変えようとして疲れ切る
相手の性格改造は難易度が高いです。変えやすいのは、自分の距離感・返答の型・相談導線です。
- 落とし穴3:我慢が限界を超えてから動く
限界を超えると、選択肢が「辞める/耐える」になりやすい。早い段階で相談や整理を入れる方が、現実的な手が打てます。
関連記事(あわせて読むと整理が進みます)
- 【久留米市】職場の悩み相談|「明日、会社に行きたくない」を安心に変える
- 【仕事の悩み】自分を責めるのをやめる。自責のループを断つ心の整え方
- 【生きづらさ】性格のせいじゃない。才能を活かして心をほどくカウンセリング
アダルトチルドレン・インナーチャイルドの視点:なぜ「いい人」をやめるのが怖いのか
子どもの頃に「親の機嫌で家の空気が変わった」「甘えるより、気を遣う方が安全だった」という環境だと、社会に出ても心が同じやり方を使います。職場で上司が不機嫌だと、過去の記憶が反応して「怒らせたら終わりだ」と感じてしまう。
だから僕は、職場の人間関係がうまくいかない時ほど、表面的なコミュニケーション術だけでなく、内側の恐れを言語化して、今の自分に合うやり方へ更新することが大切だと思っています。
自分らしく楽に働くための「小さな実験」3ステップ
いきなり人生を変える必要はありません。職場は実験場にできます。
ステップ1:週に1回だけ「小さなNO」を入れる
大きなNOは怖いので、小さく始めます。
- 即答をやめて「確認します」にする
- 雑談を無理に伸ばさず「戻りますね」で切る
- 一度引き受けた仕事の「期限」を提案する
ステップ2:「相手の反応」を観察する(評価ではなくデータ)
相手が不機嫌でも、世界が終わるわけではない。ここを体験として脳に学習させます。怖さは、正しさではなく慣れで薄まります。
ステップ3:成功を“感情”ではなく“記録”で残す
いい人をやめ始めた時、罪悪感が出やすいです。だから、うまくいったことを短くメモします。
- 「確認します」と言えた
- 優先順位を相談できた
- 帰宅後の反省会が10分減った
こういう小さな勝ちが、自分軸の土台になります。
最後に:あなたが悪いわけじゃない。やり方を変えれば呼吸は戻る
職場の人間関係がうまくいかない時、「自分さえ我慢すれば」と思ってしまう人ほど、本当は優しくて責任感が強いです。だからこそ、僕は伝えたい。優しさを自分に向ける番です。
いい人を卒業するのは、誰かを切り捨てることではありません。自分の心と体を守りながら、働き方を整えることです。少しずつで大丈夫。即答をやめる、ワンクッション置く、呼吸を深くする。そこから、関係の質は変わっていきます。
自分らしく呼吸できる毎日を、ここから作っていきましょう。
よくある質問
職場の人間関係がうまくいかない原因が自分にある気がして苦しいです。どう考えればいいですか?
僕は「反省」と「自責」を分けて考えるのが大事だと思っています。反省は行動を修正する材料になりますが、自責は人格否定になりやすく心が削れます。まずは出来事を「事実」と「解釈」に分け、別解釈を3つ出す練習をしてみてください。
断れない性格で、頼まれるとつい引き受けてしまいます。最初の一歩は何ですか?
最初の一歩は「断る」ではなく「即答しない」です。たとえば「確認して◯時までに返します」とワンクッション入れるだけで、相手のペースから自分のペースに戻れます。ここが自分軸の入口になります。
いい人をやめたら嫌われそうで怖いです。どうしたらいいですか?
怖さが出るのは自然です。いきなり大きく変えるより、週1回の小さなNO(即答しない、期限を提案する等)を入れて、嫌われずに関係が回る体験を積むのがおすすめです。怖さは正しさではなく慣れで薄まっていきます。
相手が不機嫌だと、気になって仕事に集中できません。対処法はありますか?
僕は「相手の機嫌」と「自分の価値」を切り離す練習が必要だと考えています。まずは呼吸で体の緊張を落としてから、紙に「事実」と「解釈」を書き分けます。その上で別解釈を3つ出す。これを繰り返すと、相手の感情に巻き込まれにくくなります。
職場の人間関係がうまくいかない時、距離を取るのは逃げですか?
僕は逃げだとは思いません。距離を取るのは「自分を守る技術」です。職場では、関係を良くする努力と同じくらい、消耗しない距離感を作ることが重要です。雑談の頻度を減らす、依頼はチャットに統一するなど、運用の工夫として境界線を作ると安定します。
カウンセリングでは具体的にどんなことをしますか?
まず「どんな相手・場面でいい人スイッチが入るか」「その時の自動思考」「体の反応」を整理します。その上で、即答をやめる・代案を使う・優先順位の確認など、現実に使える言い方や運用を一緒に作っていきます。



